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飯田市制施行70周年記念協賛事業 合唱劇「カネト」 飯田公演
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「これが天竜峡か!」
切り立つ崖を見下ろして、カネトは思わず息を飲み込みました。
「どうやって資材を運ぶんだ!
歩けそうな道なんてどこにもない!
いったいどうやって測量したらいいんだ」
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その時です。はるか真下の天竜川を、一艘の川船が、矢のようなはやさでくだっていきました。
「そうだ!天竜の人たちがいるじゃないか!
あんな激流を、たった竿一本で船を操って進む人がいるんだ。立派にやり遂げてみせるぞ」
M11.天竜峡
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そう心に誓ったカネトでしたが厳しい自然にはばまれ、測量は一進一退でした。
M12.戦い
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「ワー!助けてくれ!」
雪に足を取られ、仲間が足を滑らせました。
命綱のおかげで、かろうじて岩にぶら下がっています。
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真下は断崖絶壁で落ちたら命はありません。
「命綱が岩でこすれて切れそうだ!ゆっくり、ゆっくり……」 「助かった!」
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こんなことだけではありません。
天竜峡谷は野生の王国そのもので、カネトたちはいのししやマムシ、蜂の急襲にあったりしました。
M13.命綱
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「あっ!タヌキ!」
測量隊が仕事を終えて、宿舎に戻ると、一匹の子ダヌキが迷い込んでいました。
「タヌキだ!つかまえて!」 「よし!そっちだ!あっ!こっちだ!こっち!」
M14.タヌキ
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やっとみんなで捕まえた子ダヌキはポン太と名付けられました。
「かなちゃん、ポン太はうまいタヌキ汁になるよ」
「だめ!ポン太は私の大切なともだち!」
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ポン太はひとりぼっちだったかなちゃんの、良い遊び相手になりました。
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けれど、雨の日が何日も続いたある日、ポン太の姿がぷっつりと見えなくなってしまいました。
ポン太はどこに行ってしまったのでしょう。
M15.雨
M16.ポン太
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M17.食料を求めて
M18.今日よりも明日
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天竜峡に来て2年と数ヶ月、測量はついに完了しました。
これでアイヌ測量隊は古里へ帰れるのです。
M19.帰れるぞ!故郷へ
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「さあ、みんな踊ろう!」
みんな嬉しくて、輪になって踊り始めました。
アラハオー ホイヤー イヤハオー ホイヤ……
みんなの顔が輝いていました。
M20.喜びの踊り
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そこへ、工事担当の責任者、木本さんがやってきました。
「測量は終わりましたが、引き続き線路工事の現場監督を引き受けてくれませんか?
天竜峡〜門島間8.3キロメートルの工事はとても難しく、危険な工事です。
けれど、カネトさんならきっとやれる。」
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「……分かりました。引き受けましょう。
頼まれた以上、必ずやり遂げて見せます。」
「だが、現場監督は大勢の人夫たちを指揮しなければならない。
アイヌの私に人夫たちが素直に従ってくれるだろうか……」
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ガー!ダッダッダッダッダッー
削岩機の音が山にけたたましくこだまします。
M21.工事現場
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台風で天竜川の水があふれ、土台ごと線路が流されてしまうこともありました。
M22.カネトの夢が…
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「このままでやり遂げることが出来るだろうか」
カネトは焦り、人夫たちもいらだっていました。
M23.後悔
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「水だぁ!トンネルから水が出たぞ!」
トンネルの天井から水が出て、手がつけられないほどです。
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「ちきしょう!こんな工事やってられねえ!
アイヌ野郎にこき使われるのはもうまっぴらだ!」
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不意に、荒くれ男が丸太でカネトに殴りかかりました。
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「どうせ壁をコンクリートでまくんだ!
こいつも一緒に埋めてしまえ!」
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カネトは男たちに、穴の中に放り込まれ、土砂で埋められてゆきます。
土砂をかけるスコップの音だけがガチャガチャと響きます。
M24.襲われる
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「聞いてくれ!俺は、北海道にいるときも、ここに来てからも、この仕事に誇りを持って生きてきた。
人間は姿、形でいきるのではない!おまえたちの夢や希望や、人間の誇りはどこにあるんだ!」
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「俺をアイヌとさげすむおまえたちは、何をしてきたんだ!
アイヌを殺すことが、おまえたちの誇りだというなら、さあ早く、コンクリートをこの穴にぶち込むがいい!」
M25.アイヌの誇り
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「カネトさん!大丈夫か!」
カネトの動じない姿に、荒くれ男たちの手が止まったその時、工事責任者の木本さんが飛び込んできました。
カネトが穴から助け出されると、みんなから歓声がわきおこりました。
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この事件で、ただひたすら自分の信念を語り続けたカネトに、荒くれ男たちの態度もすっかり変わり、みんなで力を合わせて工事を進めていきました。
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こうして、工事をはじめて3年後、天竜峡〜門島間は見事に開通し、その5年後、飯田線は全線開通しました。
今も飯田線は、地域の足となり、谷あいをぬって走ります。
M26.完成
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カーテンコール
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