合唱劇「カネト」 飯田公演 飯田線全線開通70周年・飯田市制施行70周年記念協賛事業 2007年10月14日 飯田文化会館

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合唱劇「カネト」 飯田公演 レポート

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飯田市制施行70周年記念協賛事業 合唱劇「カネト」 飯田公演
「これが天竜峡か!」
切り立つ崖を見下ろして、カネトは思わず息を飲み込みました。

「どうやって資材を運ぶんだ!
歩けそうな道なんてどこにもない!
いったいどうやって測量したらいいんだ」
その時です。はるか真下の天竜川を、一艘の川船が、矢のようなはやさでくだっていきました。
「そうだ!天竜の人たちがいるじゃないか!
あんな激流を、たった竿一本で船を操って進む人がいるんだ。立派にやり遂げてみせるぞ」

M11.天竜峡
そう心に誓ったカネトでしたが厳しい自然にはばまれ、測量は一進一退でした。

M12.戦い
「ワー!助けてくれ!」
雪に足を取られ、仲間が足を滑らせました。
命綱のおかげで、かろうじて岩にぶら下がっています。
真下は断崖絶壁で落ちたら命はありません。
「命綱が岩でこすれて切れそうだ!ゆっくり、ゆっくり……」 「助かった!」
こんなことだけではありません。
天竜峡谷は野生の王国そのもので、カネトたちはいのししやマムシ、蜂の急襲にあったりしました。

M13.命綱
「あっ!タヌキ!」
測量隊が仕事を終えて、宿舎に戻ると、一匹の子ダヌキが迷い込んでいました。
「タヌキだ!つかまえて!」 「よし!そっちだ!あっ!こっちだ!こっち!」

M14.タヌキ
やっとみんなで捕まえた子ダヌキはポン太と名付けられました。
「かなちゃん、ポン太はうまいタヌキ汁になるよ」
「だめ!ポン太は私の大切なともだち!」
ポン太はひとりぼっちだったかなちゃんの、良い遊び相手になりました。
けれど、雨の日が何日も続いたある日、ポン太の姿がぷっつりと見えなくなってしまいました。
ポン太はどこに行ってしまったのでしょう。

M15.雨
M16.ポン太

M17.食料を求めて
M18.今日よりも明日
天竜峡に来て2年と数ヶ月、測量はついに完了しました。
これでアイヌ測量隊は古里へ帰れるのです。

M19.帰れるぞ!故郷へ
「さあ、みんな踊ろう!」
みんな嬉しくて、輪になって踊り始めました。
アラハオー ホイヤー イヤハオー ホイヤ……
みんなの顔が輝いていました。

M20.喜びの踊り
そこへ、工事担当の責任者、木本さんがやってきました。
「測量は終わりましたが、引き続き線路工事の現場監督を引き受けてくれませんか?
天竜峡〜門島間8.3キロメートルの工事はとても難しく、危険な工事です。
けれど、カネトさんならきっとやれる。」
「……分かりました。引き受けましょう。
頼まれた以上、必ずやり遂げて見せます。」

「だが、現場監督は大勢の人夫たちを指揮しなければならない。
アイヌの私に人夫たちが素直に従ってくれるだろうか……」
ガー!ダッダッダッダッダッー
削岩機の音が山にけたたましくこだまします。

M21.工事現場
台風で天竜川の水があふれ、土台ごと線路が流されてしまうこともありました。

M22.カネトの夢が…
「このままでやり遂げることが出来るだろうか」
カネトは焦り、人夫たちもいらだっていました。

M23.後悔
「水だぁ!トンネルから水が出たぞ!」
トンネルの天井から水が出て、手がつけられないほどです。
「ちきしょう!こんな工事やってられねえ!
アイヌ野郎にこき使われるのはもうまっぴらだ!」
不意に、荒くれ男が丸太でカネトに殴りかかりました。
「どうせ壁をコンクリートでまくんだ!
こいつも一緒に埋めてしまえ!」
カネトは男たちに、穴の中に放り込まれ、土砂で埋められてゆきます。
土砂をかけるスコップの音だけがガチャガチャと響きます。

M24.襲われる
「聞いてくれ!俺は、北海道にいるときも、ここに来てからも、この仕事に誇りを持って生きてきた。
人間は姿、形でいきるのではない!おまえたちの夢や希望や、人間の誇りはどこにあるんだ!」
「俺をアイヌとさげすむおまえたちは、何をしてきたんだ!
アイヌを殺すことが、おまえたちの誇りだというなら、さあ早く、コンクリートをこの穴にぶち込むがいい!」

M25.アイヌの誇り
「カネトさん!大丈夫か!」
カネトの動じない姿に、荒くれ男たちの手が止まったその時、工事責任者の木本さんが飛び込んできました。
カネトが穴から助け出されると、みんなから歓声がわきおこりました。
この事件で、ただひたすら自分の信念を語り続けたカネトに、荒くれ男たちの態度もすっかり変わり、みんなで力を合わせて工事を進めていきました。
こうして、工事をはじめて3年後、天竜峡〜門島間は見事に開通し、その5年後、飯田線は全線開通しました。
今も飯田線は、地域の足となり、谷あいをぬって走ります。

M26.完成
カーテンコール
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